こんにちは、皆さん! 1966年公開のSF映画「ミクロの決死圏」は、半世紀以上前に作られた映画とは思えないほど斬新な発想に驚かされます。
医療チームを乗せた潜航艇をミクロサイズまで縮小し、人体内部へ送り込み体内から治療を施すという設定。人体の内部という未知の世界を舞台にした冒険は、単なるSFを超えた緊張感とロマンに満ちたファンタジックボイジャー、特撮によるその映像表現にも感動します!
今回は、本作を振り返り見どころや印象、そして軸となる斬新な発想のミーム的拡散について考察してみたいと思います。
「ミクロの決死圏」予備情報
「ミクロの決死圏」(原題: Fantastic Voyage)は、1966年に公開されたアメリカのSF映画です。瀕死の要人を救うため、医療チームを乗せた特殊潜航艇をミクロ化して体内へ送り込むという大胆な発想で描かれるSFアドベンチャー映画。アカデミー賞の美術賞・視覚効果賞を受賞した作品。
【スタッフ】
監督:リチャード・フライシャー(海底二万マイル)
脚本:ハリー・クライナー、デヴィッド・ダンカン
原案:オットー・クレメント、ジェローム・ビクスビー
【キャスト】
スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ他
★YouTube「ミクロの決死圏」Pickup
●「ミクロの決死圏」ざっくりあらすじ
東西冷戦の時代。物体を細菌大に縮小するという画期的な発明をしたチェコの科学者ヤン・ベネシュ博士はアメリカへ亡命。アメリカは軍の厳重な警備下で出迎えるも、敵側のスパイに襲われ軍の施設に緊急搬送されることに。
軍の上層部は、脳挫傷を起こしていた博士を救うため、早速、博士のミクロ化技術を使うことを決断、医療チームが編成され、特殊潜航艇「プロテウス号」でベネシュ博士の体内に入り込み、脳内手術を行うべく計画が進められます。
しかし、その技術はまだ未完成、縮小可能な時間は60分、その間にレーザー光線による治療を完遂しなければならないというタイムリミットがありました。

選ばれた精鋭チームは、艦長兼操縦士のビル・オーウェンス海軍大佐、脳外科医デュヴァル博士とその助手コーラ・ピーターソン、循環器専門医マイケルズ博士、そして特命を受けたCIA特別情報部員チャールズ・グラントでした。
グラントは不測のトラブルのためにチームを監視する任務も課せられていました。
チームを乗せミクロ化されたプロテウス号は、頸動脈への注射を通じてベネシュ博士の体内に潜入していきます。
プロテウス号の位置は外部モニターに映し出されます。外部と無線で連絡を取りながら血管内を進んでいきました。
目の前に広がるのはまさに未知の世界、血管内を流れる大量の赤血球の神秘さに目を見張ります。
◆ ◆ ◆
血管内を進むプロテウス号は動脈と静脈の癒着部分に遭遇、血流の渦に巻き込まれ心臓に向かってしまいます。心臓に入れば拍動の衝撃でプロテウス号は破壊される恐れが・・外部チームは心臓を一時停止、その間をぬってプロテウス号は全速力で心臓を通過、窮地を脱します。
その後も、リンパ節内では網状ファイバーに絡まれたり、傷を修復するため集まってきた血小板に攻撃されたりと、幾度か体内組織に飲み込まれそうになる危機を乗り越え脳内へ到達します。
ところが、万全に準備していたはずのレーザーガンの部品が一部損傷しており、内部にスパイがいることが示唆されます。とりあえず、無線機の部品を代用しレーザーガンを修復したものの、無線機は使えなくなり、外部と連絡は不能となってしまいます。
脳内の患部に到着するも残り時間はわずか6分。潜航艇から出てデュヴァル博士らは必死でレーザー光線で治療を行い無事完了!
◆ ◆ ◆
しかし、そこにマイケルズ博士が乗っ取ったプロテウス号が、全速力でデュヴァル博士たちの方へ向かってきたのです。彼がスパイだったのです。
これに気づいたグラントは、レーザー銃をプロテウス号めがけて発射、プロテウス号は方向を変え体内組織に衝突。異物を感知した白血球がすぐに押し寄せ、プロテウス号はマイケルズ博士と共に飲み込まれてしまいます。
潜航艇を失ったメンバーたち、タイムリミットが迫っています。早急に体外へ脱出しなければ体内で元のサイズに戻り大惨事が起こってしまいます。
最短の脱出ルートはどこなのか?
はたして彼らのミッションは成功できるのか?
「ミクロの決死圏」見どころ・感じどころ

◆幻想航海 スペクタクル シークエンス
ミクロ化して体内に突入してゆくという、今までにない斬新な発想によるSFストーリー。医療チームが勇気と知恵と行動力で任務を遂行してゆく姿が見どころ!
体内を巡る未知の冒険、潜航艇は度重なる不測の事態を克服しながら、航海を続けてゆきますが、スパイの存在による妨害工作やハプニングが勃発、サスペンス要素も仕込まれた体内のファンタジックボイジャーに驚かされ、そのスペクタクル・シークエンスにハラハラ・ドキドキさせられます。
現代のCG(コンピューターグラフィック)無き時代、SFX(Special Effects)という特殊撮影を駆使して制作された映像ですが、ストーリーと共に、見応え十分な映画に仕上げられています。
◆科学技術の裏に潜む恐るべき落とし穴
本作は、当時の東西冷戦を反映するように、軍事目的で開発された科学技術から着想を得て作られたと言えるような映画です。
物質をミクロ化するという技術は今どうなのか分かりませんが、レーザーによる治療の研究は既に当時から始まっており、現在では様々に実用化されるものになっていますね。体内映像の視覚表現とも併せ、科学教育の一面として評価されるものではないかと思います。
しかし、科学的ロマンの背景には政治的・軍事的な動きが絡んでいることも否めない事実でしょう。原子研究による原爆など大量破壊兵器がその一例です。
テクノロジーの裏には、こうした戦争や殺戮の影が見え隠れすることを私たちは知らねばなりません。本作はまさに科学技術の進歩と軍事利用の二面性を映し出すものでした。
「ミクロの決死圏」に見るミームコンテンツ

ミームとは?
遺伝子が生物の情報を伝えるように、「ミーム」は文化的情報をリユース・リメイクしながら模倣によって伝えられてゆくことを示しています。
ミーム(meme)という言葉は、1970年代、進化生物学者リチャード・ドーキンス氏の著書「利己的な遺伝子」で述べられたもので、人間の思想や習慣、言語、コンテンツなどの流行が文化的情報として人から人へ伝搬してゆく概念を示すものです。
現代のインターネットミームでは、SNSやWebサイトで共有される画像、動画、テキストなどのコンテンツを元に、音楽の追加やちょっとしたアレンジが加えられながら、模倣され拡散してゆく現象を指し、やがて元のコンテンツが「ミーム」として定着してゆくのです。
ミームコンテンツは、アレンジできる面白さ、使いやすさにより、共感、共有、模倣されやすく、アレンジ・改変によって次々に増殖し拡散が加速します。
今やミームは単なる流行ではなく、「模倣による伝達」として、人々の文化やコミュニケーションの形を変えるカルチャー・リサイクルとして理解されているのです。
新しい着想「ミクロの決死圏」
新しい着想の映画「ミクロの決死圏」もまたミームを生み出しています。
本作は、人体医学や潜航艇、ミニチュア・小型化など、当時の科学技術をベースに想像力を膨らませたもので、その画期的な着想により高評価を得た作品となりました。
優れたアイデアは別のメディアでも再利用され、映画の公開と同時期に、生科学者でありSF作家のアイザック・アシモフ氏の手によりノベライズされています。
ミクロ化という着想は、実は、手塚治虫氏の鉄腕アトム(アメリカではASTRO BOY)の一部エピソードを流用したとされていますが、後年、手塚氏監修のアニメでは「ミクロの決死圏」の構想を逆利用したストーリーが作られました。
その後も、「ミクロの決死圏」に似た発想の映画「インナースペース」が制作され、また、ゲームの世界にも展開されました。「ウルトラセブン」のエピソードにも同じアイディアが使用されたり、ご存知「ドラえもん」ではスモールライトが使用されていたりと、続々後世に影響を及ぼしているのです。
あるある、なるほど・ザ・ワールド
こうした例は他にもたくさん見られます。いくつか例を挙げてみると分かりやすい「なるほど・ザ・ワールド」ですね。
★ガリバー旅行記 ⇒⇒ SFのスケール変換ものに
ガリバー旅行記(ジョナサン・スウィフト著)の物語に出てくる巨人国・小人国、人間のサイズを変えるというおもしろいアイデアがありました。
このアイデアが後に「ミクロの決死圏」を始めとする様々なドラマ・アニメなどへ発展していきました。
★ギリシャ神話に登場する「迷宮」⇒⇒ 現代のゲームに
クレタ島の迷宮(ラビリンス)は、現代ゲームの世界の先祖ともいえるもの。
未知の迷路を探索し、怪物と戦い、宝を得る、という構図は、「ウィザードリィ」「ドラゴンクエスト「ファイナルファンタジー」と受け継がれています。設定は変わっても、物語のベースは数千年生き続けるているのです。
★フランケンシュタイン ⇒⇒ AI暴走ものに
イギリスの作家メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」では、人間が創造したものが創造主を超え怪物になってしまうというテーマが描かれました。
後日、このアイデアは技術進歩に伴い、「2001年宇宙の旅」のコンピューターHALの暴走、「ターミネーター」「マトリックス」でも、人間の創造物が創造主を超えてしまう危うさが描かれ、現代のAI危機論へリミックスされています。
★ロミオとジュリエット ⇒⇒ 無数の恋愛作品に
古典に表される男女の愛と別離は数あれど、「ロミオとジュリエット」は、文学史最大のミームと言えるでしょう。愛し合う二人を社会が引き裂くという構図です。
これが後に「ウエスト・サイドストーリー」「タイタニック」などの映画・ドラマ、多数の少女漫画やアニメ作品に繰り返し現れます。登場人物や時代は変わっても、感情構造は同じで再々利用されているのです。
★七人の侍 ⇒⇒ チーム結成ものに
黒澤明監督による新発明のミームと言えるかもしれません。構造は、脅威が現れたため専門家を集めチームを結成、各人それぞれに見せ場を設け、最後は大決戦、という構図です。
これが後に「荒野の七人」「オーシャンズ11」「アベンジャーズ」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」などへ拡散、仲間を集める映画のテンプレートのようになりました。
★もし歴史が違っていたら? ⇒⇒ 架空戦記・並行世界
「もし、歴史がこうだったら」というifの世界の発想。一つの条件を変えたら世界はどうなるか、というミームが非常に強力な発想なのですね。
そこから、「高い城の男」(フィリップ・K・ディック著)や日本の架空戦記「シュタインズ・ゲート」、また、無数の並行する宇宙が存在するといマルチバースなどの考えが生まれ、「歴史のif」が科学、SF、ゲーム、アニメなど様々なジャンルへと展開されています。
いやー、面白いものです!
ひとつのアイデアが国境とメディアを越えて進化してきたことがよく分かりました。
古くても強力なミームは、時代と共に進化する新しい技術と、変貌する新しい社会環境、という組み合わせで次々に誕生してゆくのですね・・
「ミクロの決死圏」まとめ
はい、ミクロサイズとなって体内を冒険するという夢のようなストーリー、想像を超えるミッション、発想が素晴らしいですね!
1966年という大分以前の作品ですが、今見ても見ごたえ十分、ファンタジックでドキドキ・ハラハラ、大人も子供も楽しめる映画です。
軍事目的の技術という機密めいた話が背景にありますが、医学の進歩というテーマを象徴した物語でもあり、SF映画ジャンルの不朽の名作と言えるでしょう。

★それでは、またお会いしましょう。Good Luck!














