今日は、皆さん! ドラマ「ミスター・サンシャイン」は、朝鮮半島が激動の時代を迎える中、歴史のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を軸に必死に生き方を選び取ろうとする人々の物語です。
淡く差し込む光、静かに揺れる感情、言葉にできない想い、祖国への愛と誇り。物語に描かれる「善」と「悪」、「光」と「影」は、圧倒的な映像美と歴史ロマンにも満ち、私たちを引き込んでしまいます。
激動の時代を生きた彼らの姿は、遠い過去の物語でありながら、どこか今を生きる私たちにも響いてくるようです。
今回は、そんな作品の魅力と余韻を振り返り、ドラマの背景となった朝鮮王朝末期の複雑な動乱の時代を理解すべく整理してみました。
「ミスター・サンシャイン」予備情報
「ミスター・サンシャイン」は、韓国tvNにて2018年に放送されたテレビドラマ。制作には異例の430億ウォン(約43億円)がかけられ、韓国ケーブルテレビでは最高水準の高視聴率を記録しました。
物語は、朝鮮時代末期の動乱の時代を背景に、渡米した奴婢の少年が米軍将校となって祖国朝鮮に戻り、高い志を持つ名家の令嬢と出会い心を通わすロマンス。美しい映像美と歴史描写、魅力的な人物像を描き高評価を得た大作、百想芸術大賞など多くの賞を受賞した作品です。
【スタッフ】
監督:イ・ウンボク(太陽の末裔・トッケビ)
脚本:キム・ウンスク(太陽の末裔・トッケビ)
【キャスト】
ユジン・チョイ役:イ・ビョンホン(オールイン・王になった男)
コ・エシン役:キム・テリ(お嬢さん・二十五、二十一)
キム・ヒソン役:ピョン・ヨハン(六龍が飛ぶ・ミセン~未生~)
イ・ヤンファ役:キム・ミンジョン(ニューハート・いばらの鳥)
ク・ドンメ役:ユ・ヨンソク(キムサブ・応答せよ1994)
「ミスター・サンシャイン」ざっくりあらすじ

1871年、朝鮮は開港を迫る米国艦隊の攻撃を受け、圧倒的な力の差に敗戦、国内は混乱を極めていた時代。
両班のキム家で暮らす奴婢の少年ユジンは、雇い主である両班に逆らった父母と共に殺されそうになったが、母の機転でからくも逃げのび、郊外のある陶工の家に辿り着いた。そこでたまたま陶器を買いに来たアメリカ人牧師に出会い、行き所のないユジンは彼についてアメリカへ渡ることに。
1902年、成人し米軍将校となったユジンは、不忠を働く大使暗殺任務を負い、朝鮮に帰国します。
暗殺を決行しようとする寸前、違う人物が同じターゲットを狙っていることに気づきます。お互い素性が分からぬまま、その場を立ち去りますが、街ですれ違った際、火薬の匂いがしたことで、二人はお互いに先ほどの暗殺者だということを察します。
後日、その女性が両班のコ・エシンだと知ったユジンは彼女を大使館に呼び寄せるも、両班の娘が銃を持って戦うには何か事情があると、深く問い詰めることもせず、逮捕もすることはありませんでした。
その後も何度か顔を合わせるユジンとエシン、交流を続けるうちに二人は惹かれあう仲となっていくのでした。
◆ ◆ ◆
エシンは適齢期になっても結婚しようとしません。幼い頃、義兵だった両親を殺されたエシンは、親の意志を継ぎ、祖国を守ろうと銃の腕を磨き、義兵として戦う決心を固めていたのです。
エシンには親が決めた婚約者キム・ヒソンがいました。エシンは婚約破棄を申し出ますが、エシンに好意を持つヒソンは友人としてつきあうことを提案、その後は義兵活動をするエシンを見守ります。
もう一人、エシンを慕い陰ながら見守る男、日本「黒竜会」組織の一員としてソウル支部長を務めるク・ドンメ。彼は朝鮮最下位の身分である白丁の出身で、虐げられていた子供の頃にエシンに命を救われた過去がありました。
ユジンの帰国にはもう一つ目的がありました。それは両親を殺したキム家への復讐、今や優位に立つユジンは、キム家を訪れ過去の因縁を持ち出し恫喝するのでした。ヒソンの母はユジンの復讐の矛先が息子ヒソンに向かうことを恐れ、当面の間、「ホテル・グローリー」で生活し自宅に戻らぬよう伝えます。
日本の存在感が増す中、義兵団やエシンは弾圧を受けますが、ユジン、ヒソン、ドンメは、それぞれの方法でエシンたちを守ろうと努力します。
◆ ◆ ◆
ある日、ユジンの恩人であるアメリカ人宣教師殺害事件が発生。また、反乱を口実に日本兵がエシンの家を襲撃、それらは売国奴イ・ワンイクの陰謀によるもので、彼は日本と通じ朝鮮王の高宗を脅し政治を操っていたのです。
義兵だった両親を殺したのもワンイクだと知ったエシンはワンイク暗殺を実行、仇を討つことに成功します。
1907年頃、朝鮮は完全に日本の占領下におかれ、義兵団だけが日本兵に対し抵抗を続けていました。そんな中、日本兵が拠点とする「ホテル・グローリー」が爆破され、駆け付けたユジンはそこで怪我をしているエシンを助けます。
爆破に怒り狂った日本兵は義兵団の本拠地を逆襲、エシンたちは間一髪で脱出します。しかし一方、ヒソンは朝鮮の状況や反日を新聞に掲載したため日本軍に逮捕され落命、ドンメも日本黒竜会に反旗を翻したため落命してしまいます。
行き場を失ったエシンら義兵団は列車で逃亡を図りますが、同乗していた日本兵に存在を気づかれてしまいます。行動を共にしていたユジンは、エシンを逃がすために自らを犠牲にして列車の連結部を切り離し、命を落とすことに。
この後、義兵団たちの命運はいかに・・
◆ ◆ ◆
「ミスター・サンシャイン」見どころ・感じどころ

本作に描かれる日本の朝鮮侵略は史実であり、本作では日本が悪役、でも策謀をめぐらす悪役朝鮮人も登場します。登場人物それぞれが、不条理な時代に抗い生き延びる術を模索すること必死です。そんな姿は、現代を生きる私たちにも通じるものがありますね。
◆歴史性/朝鮮末期、動乱の中に揺れて散る恋
敵か味方か?侵略側の軍人ユジンと朝鮮の義兵エシンの出会い。それぞれの信念と、抱える過去を持ち、時に衝突し、時に手を取り合いながら、二人の間は少しずつ縮まりピュアで美しい恋愛に発展してゆきます。
二人はそれぞれの立場や信念において譲れない部分もあり、愛と葛藤の狭間で揺さぶられます。見つめ合う視線、交わされる言葉、そしてすれ違いう二人。歴史に翻弄されながらも必死に生きる二人のラブストーリーは、涙なしには見れません。
◆映像美/ロマンチックな映像美が素晴らしい!
ストーリーだけでなく、映像の美しさや背景音楽、照明の演出も相まって、映像と物語が完全に融合、まるで映画のようなスケール感とロマンチックな恋愛のビジュアル感覚が素晴らしい!
路面電車やホテル・グローリーの外観など、朝鮮末期の街並みを再現したロケーションがリアル。
また登場人物の衣装は、韓服・和装・洋装が共存することで、多様な文化が混沌としている複雑な時代が自然に描かれているところも見逃せません。
◆情感/それぞれに個性的なキャラクターの魅力
主人公やヒロインはもちろんですが、見どころの一つは、サブキャラクターたちの魅力です。時代に翻弄される人間の感情や心理、選択の重みが物語を深くしています。
ユジン・チョイ:かつて命を狙われた奴婢の子が成人し、米軍大尉として祖国に戻り復讐を果たす。祖国に対する憎しみと愛情の狭間で揺れ動く心理・表情・所作、まさにユジン役にピッタリのイ・ビョンホンさん!やっぱり一流の俳優さんですね!
コ・エシン:両班のお嬢様ながら、両親を殺されたことで、義兵の志をたて、武器をを手に取り、外国の圧力と闘う日々を送ります。ユジンへの想いを胸に秘め、切なくも悲しき熱演でした!
キム・ヒソン:エシンを愛しながらも報われず、時代に翻弄される名家の御曹司。いつも笑顔で優しい人柄、善人なんですね。惜しいかな、反日思想を掲げ日本軍に殺されてしまう・・
ク・ドンメ:日本刀をさす孤独な剣士、実は彼の出自も朝鮮。エシンへの一途な想いを胸に秘め彼女を守るが、報われることなく切実な人生の末、ヤクザな死を遂げる。
工藤ひな:複雑な事情を抱え、日本名を名乗るが、実は彼女の出自も朝鮮。ユジンやヒソン、ドンメとは信頼と理解で繋がっている。爆破事件で不本意な最後を遂げる。

★日本人役を演じる韓国人俳優さんのセリフアクセント、やっぱり気になります。まあ、それは置いといて、ストーリーを楽しみましょう。
「ミスター・サンシャイン」の時代Q&A


複雑な動乱の時代を振り返ってみましょう。
物語への理解や登場人物の心情により共感できるはず。
Q:外国勢はどのように朝鮮に入り込んできた?
A:朝鮮半島は地勢的に東アジアの要衝であり、19世紀後半は欧米の帝国主義の波にもまれ、外交的に厳しい状況に置かれていました。宗主国・清の影響下にもあり、太平洋進出を目論み南下政策をとるロシアへの配慮も必要でした。更に次々と外国勢力が朝鮮半島を標的に乗り込んでくるのです。
1866年、フランス宣教師処刑への報復を理由に、フランス極東艦隊が江華島を攻撃(丙寅洋擾)、通商を求められます。
1871年、アメリカの開港要求を拒否したため戦闘軍艦による攻撃を受け(辛未洋優)大敗します。
1875年、日本軍艦が江華島付近で挑発行動に及び、朝鮮側の砲撃(江華島事件)に対し、日本は報復を理由に武力行使による不平等条約締結に至ります。これは朝鮮を日本の勢力圏に組み込む第一歩となるものでした。
〈物語ではこの頃〉アメリカ人宣教師の助けで渡米した賤民の子どもユジンが、成長し米軍の将校にまで昇進し、祖国朝鮮へ任務のため帰国し、義兵の志を持つエシンと出会う・・
Q:当時の朝鮮王朝は外国勢力に対抗できなかった?
A:この頃、高宗の妻・閔妃(明成皇后)一族が権力を握り、朝廷の要職を掌握、官職の売買や税金の着服など、政府は不正の温床となっていました。閔妃の浪費は国庫を潰すほどと悪行の記録が数多く残ります。このように権力者の無能と腐敗により、国内状況は悪化の一途をたどり、外国の介入を招くことにつながりました。
民衆の不満により反乱が勃発、閔妃一族は自らの利権と保身のため、清や日本に助けを求め、外部勢力を朝鮮国内に引き入れるという愚を犯したのです。
1895年、日清戦争に日本が勝利したことで、以後一層、日本勢力が朝鮮への影響力を強めることになりました。
〈物語ではこの頃〉ユジン・チョイは、アメリカ公使館の領事代理として任務を遂行する一方、祖国への大儀を想い、エシンや義兵団を守りつつ、陰ながら抗日運動に参加することに・・
Q:大韓帝国とは? どのように成立?
A:「大韓帝国」は、1897年~1910年の間、13年という短期間のみ維持された国家。実は「朝鮮」が国名を変えただけの、名ばかりの国家だったのです。
日清戦争に敗れた清を見限り、ロシアと接触していた明成皇后は、乙未事変で日本に暗殺されてしまいます。身の危険を感じた夫の高宗はロシア公館に亡命。
1897年、高宗は属国であった清からの独立を宣言、「朝鮮」改め「大韓民国」と国の称号を変更しました。
〈物語ではこの頃〉日本軍の専横がますます激しくなり、工藤ひなが経営するホテル・グローリーが日本軍の拠点となる。宮廷では日本におもねる売国奴ワンイクが権力を掌握し様々な謀略を仕掛けてくる。
Q:日本の朝鮮完全支配に至る過程は?
A:日清戦争に勝利した日本は朝鮮への影響力を強めていましたが、対抗するロシアとの軋轢が高じ、ついに日露戦争が勃発。この戦争にも勝利した日本は勢いづき、更に朝鮮へ強硬姿勢で臨むことに。
1904年、日露戦争勃発。日露戦争を有利にするための第一次日韓協約が策定され調印。
1905年 日本が日露戦争に勝利。朝鮮半島や満洲にも勢力が拡大します。第二次日韓協約が策定され、伊藤博文を初代とする統監府が設置され、大韓帝国の外交権は剥奪されてしまうことに。
1907年、大韓帝国の高宗がオランダのハーグ国際会議に日本の不当性を訴えるも拒否され、高宗は強制的に譲位させられてしまいます。第三次日韓協約が策定され、ここで軍隊は解散、外交権・内政権も奪われた朝鮮は実質的に日本の植民地化に至ることに。
〈物語ではこの頃〉悲劇、朝鮮軍が解散させられる。身を犠牲にしてエシンを守っていたユジン・ヒソン・ドンメはこの世を去り、生き延びたエシンは、その後も祖国を守るため義兵の育成と訓練に励む毎日をおくる・・
Q:ミスターサンシャイン、その後の歴史は?
A:第一次・第二次・第三次の日韓協約で、政治権・外交権・軍事権も奪われた大韓帝国は崩壊し、日本は韓国を併合し植民地化政策を実行します。
1909年、抗日義兵闘争は最も激しくなり、独立運動家・安重根により伊藤博文が暗殺され、憲兵警察軍隊の義兵への弾圧が激化していきました。
1910年、各地で起こっていた義兵闘争は、強力な日本軍により鎮圧され、日韓併合後は次第に落ち着いていきます。
しかし、1948年、日本の太平洋戦争敗北を機に、大韓明国(韓国)が独立するまで30有余年、隠れた抗日闘争の灯が消えることは無かったようです。
日本統治下にあった当時は報道規制が敷かれ、義兵闘争での死傷者の実態は伝えられず不明確とされるも、少ない資料から、数万を下らないものとみられています。
「ミスター・サンシャイン」まとめ
はい、19世紀末の朝鮮を舞台に、時代の流れに翻弄されながらも、祖国を守るため信念を貫こうとする名家の令嬢と、訳ありで祖国朝鮮を去った米軍人とのプラトニックな恋愛を描いた、感動的な歴史大作ドラマでした。
主人公二人は常に個人の幸せより、犠牲的精神を持って祖国の未来への大儀を選択するのですね。たとえ報われなくても、誰かのために立ち上がり、時には犠牲ともなる、そんな姿には深い感動を覚えます。これぞ「ミスターサンシャイン」が今もなお多くの人の心に残る理由なのでしょう。
想いは叶わない、愛していても叶わない、先が見えないサッドエンディング・・本作は涙なしには見られない、胸に突き刺さる、そんな珠玉の名作です。



★それでは、またお会いしましょう。Good Luck!













