「大漢風~項羽と劉邦~」壮大な歴史を駆け抜ける熱き風

大漢風/タイトル

こんにちは、皆さん! 「大漢風~項羽と劉邦~」は、古代中国の激動期を舞台に、覇権を争う二人の英雄の壮絶な生き様を描いた歴史ドラマです。

戦乱の世を駆け抜ける友情と裏切り、理想と野望、そして愛と憎しみが織りなす物語は、まるで熱風のように観る者の心を揺さぶります。項羽の剛毅と悲哀、劉邦の狡猾さと人間味、それぞれの魅力がぶつかり合い、英雄たちの運命が交錯する様は圧巻!

本記事では、この作品が放つ熱き風を、登場人物の心情や演出の妙、歴史的背景と共に振り返っていきたいと思います。

目次

「大漢風〜項羽と劉邦〜」予備情報

「大漢風〜項羽と劉邦〜」は、2006年の中国TVドラマ。古代中国の英雄・項羽と劉邦を題材として、二人の出会いから秦の滅亡、楚漢戦争の攻防、漢王朝建国までが描かれます。乱世の興亡と英雄たちの心情、彼らと共に生きる女性たちの愛憎を絡めた全50話のダイナミックな歴史物語です。

【スタッフ】

監督:ウェイ・ハンタオ、ウォン・ウェイミン
脚本:リウ・ラン

【キャスト】

項羽(こうう)役:フー・ジュン
劉邦(りゅうほう)役:シャオ・ロンション
呂雉(りょち)役:ン・シンリン
虞姫(ぐき)役:クリスティ・ヨン
韓信(かんしん)役:ウー・ユエ
范増(はんぞう)役:シン・ミン
張良(ちょうりょう)役::シェン・バオピン

★YouTube「大漢風〜項羽と劉邦〜」Pickup

「大漢風〜項羽と劉邦〜」ざっくりあらすじ

紀元前208年、秦の始皇帝が没すると一気に反秦勢力が台頭、陳勝・呉広の決起をきっかけに各地で反乱が勃発。その中に、かつて秦に滅ぼされた楚国に卓越した英雄、項羽と劉邦がおりました。

楚の将軍の血を引く青年項羽は武術に長け、その出自からも次世代の頭領と目される存在でした。
一方、劉邦は楚国沛県の官吏出身で経験豊富な30代後半、酒と女にはだらしないが庶民の実情をよく知る人物で、県令から“亭長”の役職を任され多くの人々の人望を得ていました。

ある時、県令主催の宴席で呂公とその娘・呂雉に出会います。呂公は劉邦の非凡な相を見抜き、娘の呂雉を嫁がせることに。

劉邦たちが戦に出ている隙に、襲い来た秦軍に町はかき乱され、劉邦一家は危機に陥ります。美しい貴族の娘・虞姫も秦軍に危うく捕らえられるところを項羽に助けられ、この後二人は心を通わせるようになります。

実は以前に劉邦は虞姫を見初め求婚して振られた経緯があり、劉邦にとって項羽はライバルであり恋敵でもあったのです。

秦の将軍、強敵・章邯との戦いを前に、項羽と劉邦は協力し合い作戦を立てます。二人は打倒秦で、楚の末裔懐王を旗印に押し立て協力し合いますが、その実、腹の中では自らが上位に立つことを目論んでいました。

大漢風/イメージ

懐王は項羽を上将軍に命じ、項羽は参謀の范増と共に秦の都・咸陽を目指します。各地の敵対勢力を武をもって次々に攻略してゆくのですが、しかし、戦いに時間がかかり侵攻速度は遅々としていました。

一方、劉邦軍も遅れじと、参謀の張良と共に、項羽とは別ルートで咸陽を目指します。劉邦は人脈を活用し懐柔作戦を行い、殺戮も略奪も行わず民衆を味方につけてゆき、各地域の勢力は次々と無血開城し劉邦軍に帰順してゆくのでした。

こうした反乱軍が迫っているにもかかわらず、秦の朝廷では、愚王・胡亥の寵愛を独り占めする宦官・趙高は反目する重臣の李斯を陥れ、朝廷は既に政治機能が麻痺していました。そこへ攻め込んできたのは、先着の劉邦軍、ついに秦はここで滅び去ってしまいます。

対秦戦争で身内を失った項羽は、恨みを晴らすため、降伏した20万人もの秦兵を穴埋めにしてしまいます。項羽の非人道的な行いを軍師・范増は憂慮しつつも、項羽の天下取りのため、脅威となる劉邦を亡き者にしようと画策、宴席(鴻門の会)を設けますが、危機を察した劉邦は運よくその場を逃がれ、項羽陣は劉邦を葬る機会を失ってしまいます。

項羽は西楚覇王と称し彭城を都とし治政にあたり、劉邦は辺境の地・蜀へ追いやられてしまいます。劉邦の軍師・張良は、蜀の地で英気を養い軍備を整えるよう進言、また、用兵の才がありながら項羽に重用されずにいた韓信を項羽の陣から引き抜き劉邦のもとへ送り込みます。

戦いの準備が整った劉邦軍は、いよいよ項羽軍に挑むべく蜀を発します。その頃、彭城では謀略により傀儡の懐王(義帝)が殺され、また、不満分子による離間の計によって、項羽は部下の軍権を剥奪、虞姫を相手に酒びたり、范増の苦言にも耳をかさず劉邦軍を軽く見ていました。

いよいよ戦闘は激化、韓信の知略により項羽軍は大敗北を喫し、更に、張良の”四面楚歌”作戦で、項羽軍は戦闘意欲を無くし降伏することに。最後まで残った数千の兵と壮絶な戦いを繰り広げるも項羽軍は全滅、項羽は虞姫と共に自害して果てます。

ついに天下をとった劉邦は、かつての封地「漢」をもって国号とし長安を都とします。しかし、反漢勢力による謀反や諸侯の密談は後を絶たず、漢建国から十数年後、劉邦は疑心暗鬼に陥り、ついに病の床につき崩御してしまいます。

劉邦亡き後、実権を握った呂雉は、漢王朝を守るべく、勢力旺盛な諸侯や劉邦の側室たちを容赦なく粛清してゆきます。漢建国の功労者であり、斉王に封じられていた韓信もまた謀叛の疑いをかけられ、呂雉によって捕えられて処刑されてしまいます。

呂雉は息子を傀儡帝とし自ら権力を奮い漢王朝を支えます。しかし、息子は若くして没し、呂雉の死後、呂家は粛清され、その後漢王朝は前漢・後漢と約400年に及ぶ歴史が紡がれてゆくのです。

「大漢風〜項羽と劉邦〜」見どころ感じどころ

大漢風/イメージ

秦の始皇帝亡き後、打倒「秦」を目指し各地で反乱が勃発。そうした中、楚国で蜂起した項羽と劉邦の軍が勢力を膨らませ、打倒「秦」で協力し合い、それぞれ大軍を率い中国大陸を東から西へ、南から北へと駆け巡ります。

秦を倒したその暁には、性格の全く違う二人の英雄は天下の覇権を狙い戦闘が繰り広げられます。彼らの軍師・参謀による知略・戦略を駆使した戦闘の様子は圧倒的なスケール感に満ちています。

時の運により、ついに項羽は自刃、劉邦軍が勝利を手にするのですが、秦の滅亡から漢へと移り行く時代の壮大な歴史を、目のあたりにすることができます。

項羽と劉邦二人の英雄と共に、激動の時代を生きた実在の人物たちの苦難や愛憎、栄光や悲劇といった心情も見どころ・感じどころです。物語をより一層深くおもしろく観るために彼らの出自や性格をちょっと探ってみましょう。

【劉邦】
劉邦は沛県(現江蘇省)の農民出身で、酒好き女好きの遊侠無頼の徒でしたが、兄貴分気質で面倒見がよく人心をまとめることに長けていました。彼が30代半ばの頃、仲間たちと共に秦打倒のため決起しました。
彼の性格は、良く言えば度量が広く人を引き付ける魅力的な人物、悪く言えば軽薄で要領がよく人を丸め込む人たらし。しかし、張良や韓信、蕭何といった優れた参謀に恵まれたことで、武力の項羽を下し天下を手に入れることができました。
★劉邦は、現代にも通じるリーダーシップの模範としてもよく語られる人物です。

【項羽】
項羽は楚国の名門出身、将軍の息子でカリスマ性を備えた青年武将でした。しかし、血気盛んで猪突猛進、武術においては無類の強さを誇り、傲慢なため人望は薄く、力で人を従わせるような性格でした。
楚国を滅ぼした秦への恨みは深く投降兵を生き埋めにしたり、また自らの天下に邪魔になった楚王を殺すなど非道な行いに走ります。傲慢ゆえに参謀の范憎の諫言をも聞き入れず、讒言に嵌められ、ついに軍は壊滅、自らも自刃して果てることに。

【呂雉】
呂雉と言えば、唐代の則天武后や清代の西太后と共に、中国三大悪女に名が挙がる一人。夫の劉邦亡き後、側室を残虐に殺し、漢王朝を脅かす有力武将を次々に粛清するなど、恐ろしいほどの残忍さが極だちます。夫が多くの女人を侍らせ自分を省みなかったことへの復讐心が彼女の心を捻じ曲げてしまったのかもしれません。
しかし、そうしたことの報いでしょうか、権力は握ったものの、後継の息子も娘も母に先立って亡くなり、呂雉が亡くなった後は、彼女の専制に恨みを持つ者たちによって、呂家の者はことごとく抹殺されてしまいます。

【虞姫】
クリスティ・ヨンさん演じる虞姫は美しかったですね。傾国の美女と言われる虞美人。項羽と別れる「覇王別姫」のシーンは、その後様々な物語や舞台での演目となって語られ続けています。
虞姫は生きながらえて勝者の戦利品になるより自らの身を守り、項羽との愛を全うすべく自刃して潔い死を選びます・・

【韓信】
韓信は秦に滅ぼされた韓の国の出身、能力がありながら流浪の下積み生活に耐え、項羽の下では重用されず、人材をうまく利用する劉邦に仕えたことでその実力を発揮し「国士無双の天才」と言われるほどの将軍となり、ついには斉王に封じられます。しかし後に、その勢力に危機を感じた呂雉ら漢朝により粛清されてしまいます。
★逸話 “韓信の股くぐり” は、成功のために屈辱に耐える故事としてよく知られています。
★劇中に登場し韓信を助ける月姫は、どうやら架空の人物のようです。

【張良】
張良は三国時代の諸葛孔明に並ぶ天才軍師。打倒秦の有志を求めながら諸国を巡り、始皇帝暗殺を試みるも失敗。劉邦や韓信と出会い共に打倒秦のため働きます。聡明な策士で人間関係もうまく、劉邦が天下をとった後は、あっさり権力を捨て隠遁生活を送るべく劉邦の下を去っていきます。動乱の世を渡りついで疲れた心を癒したかったのかもしれません、引き際が綺麗ですね。

【蕭何】
劉邦が平民だった頃からの友人で有能な役人。劉邦軍の戦闘の後方支援を担い、武器の調達・整備や食物の備蓄などを万全に整え、また、劉邦の風評を高める人気取りであったとしても、民間人への親切な対応も怠らなかったようです。楚漢戦争に勝利した際、劉邦はまず蕭何の軍功を讃えたとされます。

「大漢風〜項羽と劉邦〜」エピソード

秦から漢へ、時代の変遷をエピソードと共に時系列で追ってみましょう。

大漢風/イメージ

古代中国を支配していた六国(秦・趙・魏・韓・燕・楚)を武力で統一したのは秦でしたが、やがてその暴政に対し反秦勢力が蜂起、中国大陸全土に反乱の波が広がってゆきました。中でも楚の地で蜂起した項羽軍は武力で、また劉邦軍は懐柔作戦で、他勢力を巻き込みながら、別ルートを辿り秦の都・咸陽に迫ります。

その頃、始皇帝亡き後の秦朝を継承した愚王・胡亥は宦官・趙高の言いなりで政治には無関心、趙高は王の寵愛をいいことに、自らが朝廷を動かしているかの如く、丞相・李斯を陥れ排除してしまいます。

秦軍は強しと言えども、勢力を増した反乱軍に破れてしまいます。反乱軍が都に迫り来る中、朝廷の高官たちは逃亡し政治機能は麻痺、そこへ雪崩のように攻め込んできたのは劉邦軍、ここにあっけなく秦は滅び去ってしまいます。

一歩遅れて都に到着した項羽軍の圧倒的な軍事力に恐れをなした劉邦は、上将軍の項羽を立てる形で祝勝会に参加します。これは、紀元前206年に項羽と劉邦が対峙した「鴻門の会」と呼ばれる話し合いの席です。この席で項羽は劉邦を討つべく画策したのですが、劉邦の軍師・張良の巧みな交渉や勇猛な側近・樊噲の働きによって危機を逃れることができたのです。
【鴻門の会】は危機的な場面での駆け引きを象徴する故事で今も使われている言葉です。

西楚覇王を名乗る項羽により、劉邦は、辺境の地・蜀へ追いやられてしまいますが、蜀の地では、英気を養い、軍備を整え、項羽との天下分け目の決戦のため時を待つのでした。

やがて戦闘の準備が整った劉邦軍は、一気に項羽軍攻略に打ち出ます。この戦争は、項羽率いる「楚」と、劉邦が率いる「漢」との間で行われた「楚漢戦争」と呼ばれ、二人の英雄が中国全土を支配する覇権を争ったものです。
戦争は、双方互角の戦いでしたが、劉邦の軍師・張良や用兵に長けた韓信の戦術により項羽軍は次第に追い詰められ、垓下の戦いを経て、ついにこの地で虞姫と共に自刃して果ててしまいます。
この戦争中の出来事で、今でもよく例えられる故事を以下に記してみます。

【背水の陣】劉邦に従う漢の将軍・韓信が趙へと攻め込んだ時、2万ほどの韓信の軍勢は20万とも言われる趙軍を半日で打ち破ったと伝えられます。その戦術は、わざと川を背に陣を敷き、味方に退却はあり得ないと決死の覚悟をさせたものでした。「背水の陣」は絶体絶命の状況の中で全力を尽くすことを例えた言葉です。

【四面楚歌】楚漢戦争で、戦に敗れ垓下の地まで追い詰められた項羽軍は絶望的な状況にありました。そんな時、四方を囲んだ劉邦軍中から、項羽軍の故郷・楚の歌が流れてきたのです。兵士たちは故郷や家族を想い士気を失い、戦わずして降伏する者が続出、項羽はついに自ら命を絶つ運命に至ったのです。
「四面楚歌」は、助けも望めない孤立して絶望的な状況を意味する言葉です。

【覇王別姫】最後の時を迎えた覇王・項羽が寵姫・虞美人に今生の別れを告げる感動的な物語は、後世に語り継がれ、さまざまに脚色されながら小説や京劇、映画でも語り継がれています。「覇王別姫」は京劇の有名な演目の一つで、映画「覇王別姫」では、劇中の京劇で主人公の男性がの虞美人を演じていますが、これが女性よりも美しい!日本で言えば歌舞伎の女形(おやま)ですね・・

劉邦は「漢」という新しい時代の初代皇帝に即位すると、秦朝とは対照的に、厳しい法律よりも仁政をもって治世に当たり、庶民に平和と利益をもたらしました。彼は軍勢を持ちながらも、諸王との対話や、優れた交渉術により異民族とも関係改善を図り王朝を安定へと導きました。

劉邦は即位10年ほどで亡くなり、その後、皇后・呂雉を貢献として息子の劉盈が即位します(恵帝)。呂雉は劉邦が寵愛した夫人たちを恨み、残虐にも殺害、また、王朝を脅かす存在の有力諸王を次々に粛清し、呂一族を高位に就けるなど権力をほしいままにしました。
しかし、恵帝が若くして亡くなると、その血を引く子供を傀儡帝位に就け、権力を手放すことはありませんでした。が、彼女の死後、呂雉のやり方に不満が鬱積していた政敵によって、呂一族はことごとく粛清されてしまうのでした。この後、新たな勢力により漢王朝は400年という長きに渡り継承されてゆくことに・・

「大漢風〜項羽と劉邦〜」まとめ

はい、古代中国、秦から漢へと移行する時代の壮大な歴史物語、英雄たちの夢と野望と愛、そして周りの人物たちとの多彩な人間模様が描かれた歴史エンターテイメント作品でした。
項羽と劉邦、そして二人の英雄を支えた参謀や女性など、登場人物がそれぞれに魅力的!

古今東西の歴史にも繰り広げられた、戦争による殺戮と陰謀や拷問に目をつぶるシーンもありますが、概して中国大陸を駆け抜ける壮大なスケール感に感動すると共に、どのように時代が動いていったのかが学べる歴史ドラマでもありました。

項羽と劉邦の物語はとてもおもしろいダイナミックな歴史ストーリー、小説(司馬遼太郎)や漫画(横山光輝・本宮ひろ志)からの入り口もあるので、歴史を知ってる方も知らない方にもぜひお勧めです!

それでは、またお会いしましょう。Good Luck!

本ブログはSWELLを使用しています
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

居所地:日本の中央山岳地域で田舎暮らし
映画・TVドラマ大好き人間
古代ロマン・スピリチュアル小説ファン
Pen name:東岳院展大
Blog nickname:福徳星人

目次