こんにちは、皆さん! かつてフィクションとして描かれた小松左京氏のSF小説「日本沈没」の仮説が、今や現実味を帯びて語られる時代に私たちは生きています。地震、津波、火山噴火、気候変動、そして政治的混乱、国際情勢に関連する有事の不安、日本列島を揺るがす要因は枚挙にいとまがありません。
映画「日本沈没」は、単なるパニック映画ではなく、私たち日本人が「国とは何か」「民族とは何か」を問い直す鏡でもあります。もしも、どのような形であれ「日本沈没」が現実のものとなった時、私たちはいったいどうなるのでしょう? 心の拠り所はどこに求めたらよいのでしょう?
この作品を通して浮かび上がる激甚災害「沈没」という現象が、現代の日本に何を語りかけているのかを、よくよく考えてみる必要がありそうです。
「日本沈没」予備情報
「日本沈没」は、1973年(昭和48年)に小松左京氏のSF小説を元に作られた、上映時間2時間20分と長時間の映画です。地殻変動により、日本列島がすっぽり海中へ沈没してしまうという学説が現実のものとなった・・日本はどうなってしまうのか?・・老若男女全ての日本国民に警鐘を鳴らし、多大な影響を及ぼした作品です。
2006年にはリメイク版が、またTVドラマやラジオドラマでも、更には漫画やアニメでも、様々なメディアで制作されています。

「日本沈没」ざっくりあらすじ

地球物理学者の田所は、小笠原諸島の無人島が消えたのを不思議に思い、海底調査艇「わだつみ」に乗り込み、操縦士・小野寺と共に深海調査を実施します。
深海には地滑りの痕跡があり、更に日本海溝に異変があるとの一報を受け、直ちに日本海溝へ向かいます。そこで目にしたのは、海溝に地面が吸い込まれていく恐ろしい光景でした。
調査を終えて戻ると間もなく、火山の噴火による地震が発生、大勢の死者、行方不明者が出てしまいます。田所は、深海の異常が大規模災害を引き起こし、今後さらに犠牲者が増えると予想し、総理官邸に警告しますが、田所の意見は取り合ってもらうことができません。
しかし、田所の発言は、短時間のうちに現実のものとなってゆきます。マグニチュード8もの大地震が襲い、津波や火災が発生、関東圏は大打撃を受けてしまいます。
遅かりし、政府はやっと災害対策本部を設置し、消火や救援活動に全力を尽くしますが、一夜にして死者・行方不明者は360万人を超え日本中がパニックとなってしまいます。
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3ヶ月が過ぎ、まだまだ混乱状態が続く中、田所は日本列島沈没という最悪のシナリオを予測し、国民を海外に避難させる『D2計画』を提言します。
政府は秘密裏に各国に日本人の受け入れを打診して回りますが、しかし情報がマスコミに洩れ、田所の説は暴論として世間から非難され受け入れてもらえません。
田所を信頼する山本総理は、やむなく、日本の置かれた現状を国民に発表することに・・データによる予測では、およそ10ヶ月ほどで日本の国土は全て海底に沈没してしまうと。
世界各国で日本への救援が進みますが、すべての日本人を受け入れてもらうことは到底不可能なことで、840万人というのが現状でした。やがて地殻変動のスピードが進み、紀伊半島の山が割れ、大阪が海に沈んでゆきました。
山本総理は、再会した田所に一緒に逃げようと声をかけますが、田所は「日本と心中する、後の日本を頼んだぞ」とだけ言い残し去ってゆきます。
生き延びた者たち、小野寺も、そしてその恋人玲子も、離れ離れとなり、祖国を失い見知らぬ他国へ向かう列車の窓から、感慨無量の面持ちで外の景色を眺めるのでした・・果たして日本民族にどのような未来が待ち受けているのでしょうか?
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「日本沈没」見どころ・感じどころ

◆日本列島沈没の危機!
小笠原諸島の無人島が消えたことで調査した結果、地球物理学者・田所博士は、大災害の予測と日本沈没の可能性に言及します。その仮説が現実のものとなった時、政府はどのように対処していったのでしょうか?
沈没・壊滅の危機に瀕した時、政府の官僚はもとより、一般市民の中からも混乱する人々を救おうと、最後まであきらめず奮戦する姿があります。
沈みゆく日本に居残り故郷の大地日本と運命を共にする者たちがいる一方、故郷を失っても尚、僅かな希望を持ち生き延びようとする者たちも。しかし、世界に散った日本民族は祖国を失った漂流の民となってしまうのです・・
◆特撮!都市の崩壊と混乱
もし日本列島が、マグニチュード8を超える大地震に襲われたら?その様相は想像を絶するものがあります。
崩壊する建物や橋脚、降り注ぐ瓦礫やガラス、火災発生、押し寄せる津波、コンビナートの爆発、どこもかしこも大混乱に陥り人々が逃げ惑う。関東は大打撃を受け政府機能は麻痺、日本中がパニックに陥る中、やがて紀伊半島の山が割れ、四国・大阪は海に沈みゆき、富士山は火山爆発で煙を吐く。
そんな鬼気迫る地獄絵図が特撮によって映像化、大規模地震による都市の崩壊と混乱の様相が恐ろしいほどリアルに再現されます!
もう一つの「日本沈没」
「日本沈没」は2006年に樋口真嗣監督によりリメイク版が作られました。
地球物理学者・田所博士役を豊川悦司さん、総理大臣を石坂浩二さん、潜水艦・わだつみのパイロット小野寺を草彅剛さん、そして柴咲コウさんがハイパーレスキュー隊員・阿部玲子を演じています。
大筋は前作と同様ですが、本作では沈み始めた日本を救う最後の手段として、深海プレートの爆破計画を実行、小野寺の命の犠牲により日本列島は全部沈没することなく収束に至ることに。そこには、小野寺と玲子の悲恋があり、感動と感激の涙が溢れます。
本作では、小野寺と玲子の恋愛を軸に、故郷と運命を共にする者、日本を省みず我先にと脱出する高官たち、自らの犠牲と覚悟を決め最後まで人民を守ろうと奮闘する者たちと、様々な心情的部分がより色濃く描き出されています。
★YouTube「日本沈没・2006年版」Pickup
「日本沈没」にみる天変地異

日本列島をムー大陸の沈没に重ねて
有史以前の古代、現在の太平洋上に繁栄していたとされる「ムー大陸」。ジェームズ・チャーチワード著作の「失われたムー大陸」を知る人は多いでしょう。「日本沈没」をムー大陸の沈没と重ねてしまいまうのは私だけでしょうか。
ムー大陸はなぜ沈んだのでしょうか?チャーチワードの著作では、神の怒りによる地震と津波が原因と記述されていますが、彼とて、ただの空想で書いたものではないようです。
沖縄の与那国海底遺跡、ミクロネシアの古代都市遺構、中南米や南アジアに遺る数々の伝説、インドの寺院で発見された「ナーカル碑文」にはムー文明の記録があり、メキシコでも同じ絵文字が刻まれた石板が発見され、ムー文明の存在を示すものとなっています。
その沈没については、地殻変動説、巨大地震説、火山活動説など、実にロマンあふれる説がいくつも語られており、それらは現今においても、あるいは近未来に、想定できそうな事象とも言えます。
ただし、現代の地質学による見解では、太平洋の海底は数千万年以上前から海であり、ムーのような巨大な大陸が存在していた形跡は見つかっていないとされていますが・・
日本列島沈没の可能性
映画「日本沈没」を見て、現実に日本沈没の可能性は無い、とは言い切れないのが怖いところです。世界を見渡せば有史以前も含めて、過去には天変地異による大陸の沈没や隆起が実際に起こっているのですから。
【地殻変動】
日本列島は 4つのプレートの境界に位置し、世界でも有数の地震多発地帯です。先の3.11の東日本大震災では、局地的ではありますが、実際に最大1.2mの地盤沈下が観測されています。
しかし、実際にプレートの動きが変わっても、映画のように僅か数年の前触れだけで起こることは、まずあり得ないとされ、大陸の沈没には100万年というサイクルの計算になるようです。
日本列島が沈没するような大規模な地殻変動が起きた場合は、日本のみならず、プレートが繋がる朝鮮半島や中国大陸、台湾など周辺諸国や、また環太平洋地域の諸国への影響も多大なものと想定されます。
【火山噴火】
火山列島・日本では、マグマ噴火・噴出による地形の隆起や崩壊は十分考えられることですが、とりあえずは局地的。しかし楽観することはできません。地球内部の地層には石油のように、ガス溜まりが散在していることも考えられます。
ムー大陸の沈没は、火山噴火を引き金として地層のガス溜まりの爆発連鎖が起こlり、三日という短時間に大陸が海の底に消えてしまったと・・チャーチワードの「失われたムー大陸」には伝承的に書き残されています。
【隕石の衝突】
巨大隕石の衝突によるについては、日本を直撃しない限り、日本沈没にはつながることはないでしょう。しかし、これは地球規模の気候変動を招くもので、温暖期から氷河期へと向かう可能性もあるのです。
【気候変動】
人間の活動により地表温暖化が進み、近年北極は解氷し、日本でも熱過ぎる夏が続いています。このような気候が続けば将来、気候変動による海面上昇・都市の浸水・水没の可能性はあり得ることで、今世紀末には海面が最大60cm以上上昇する可能性があり、東京湾や大阪湾などの沿岸部は浸水リスクが高まるとされています。
未来への警鐘
映画のラストでは、失われた故郷日本を後に、見知らぬ南方の地へ、また極寒の地へ、人々が世界へ散ってゆく姿が描かれます。愛する人と離れ離れに、悲しく空しく辛い、それでも胸に再生の時を待ち、生きぬこうという微かな希望を感じさせてくれるシーンでした。
日本列島が沈む可能性は物理的には極めて低いことが分かりましたが、台風や津波・高潮による局地的な沈下や水没は現在でも繰り返し起こっています。政府や自治体の防災対策は重要課題ですが、私たちもこうした水害が発生することを踏まえて、日頃の自助活動の心がけが必要と言えます。
更に言うならば、物理的な沈没にも要注意ですが、将来の沈没懸念材料として、災害対策、少子高齢化、若年層の貧困、地方衰退、東京一極集中などが挙げられますね。
個々の力ではどうにもならない、政府や自治体に頑張ってもらいたいと思います。特に災害対策の遅れは命取りですから・・
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「日本沈没」まとめ
はい、日本と言う国土が消滅してしまうと言う驚愕的な映画でした。先の阪神・淡路大震災や3.11東日本大震災、能登半島大震災など、近年の自然災害と大きく重なる部分があり、災害大国日本に住む私たちは、誰でもが被災者になり得るのだと、故郷を失う苦しみに改めて共感を覚えます。
本作は、日本列島に絶望的な危機が迫り、人々がパニックに陥る様子を、感動的に、効果的に描き上げると共に、大災害へ警鐘を鳴らすものでした。明日のために、見ておくべき映画の一本と言えますね。
大災害が多発する現代、各自治体はもちろん、政府でも「防災庁」の準備が進められ、災害への備えが重要視される時代です。明日は我が身、私たちもまた日頃から自助努力を怠らぬよう心がけたいものです・・

★それでは、またお会いしましょう。Good Luck!